【DAOからDAEへ】中島聡さんの著書を読んで感じたこと。web3とはやはりインセンティブ革命である。しかしそれは、、、
web3の本質はやはりインセンティブ革命にあると感じましたが、それは表面的なNFTの発行にはありません。もっと深いところにあります。
おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は中島聡さんの著書「シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか」を読んで感じたことを書いてみます。(※要約ではありません。)
エンジニア視点でのweb3が学べる
この本は元マイクロソフトのエンジニアでもあり、現在は起業家やエンジェル投資家として活動する中島さんが、実際にエンジニアとして手を動かしてWeb3について学び、感じたことが書かれています。
Web3の全体像についての解説もありますが、理解する過程についても触れられているので、とても読みやすく理解しやすい内容でした。最初はこう思っていたけど、実際に作ってみたりDAOに参加してみるとこういう印象だった、などが書かれています。
僕自身はエンジニアからweb3を学んでいないので、そういう意味で普段のリサーチとは違う視点での勉強になりました。
興味ある方はぜひ読んでみてください!
「シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか」
今日はその中で最も強い意見でもあり、僕自身も共感した内容についての”自分なりの解釈や考察”を書いていきます。
DAOではなくDAE
「DAE:Decentralized Autonomous Ecosystem」と表記されていて、本当に大切なのはDAOではなくDAEではないかと表現もされていました。
僕はこの思想にはすごく共感します。
というのも僕がweb3に強烈に惹かれた最大の理由がこの「自動で動くエコシステムを作れるから」という点にあるからです。
僕は社会を変革するには「思想 < 仕組み」であると信じています。
たとえば、株式会社と上場の仕組みができたからこそ一攫千金を夢見てイノベーションが加速したと思いますし、YouTubeができたから才能ある若者がYouTubeに流れてテレビの衰退が加速したと思っています。
何らかの仕組みが出来上がり、そのインセンティブ設計によって人々が動き、全員が自分の利益のために行動した結果、社会が変革されている、この流れです。
事実、今なお地球温暖化は継続中で、環境問題は年々進み、貧困に喘ぐ人は多く存在しますが、その事実を知らされて寄付や節約をお願いされても(思想の共有)、社会は変革されません。
たとえば、同じ労力をかけたとして、
発展途上国での教育問題を解決する事業→月収20万円
大した課題解決はしてないけど収益が上がる事業→月収2,000万円
この2つが存在するとしたら、あなたはどっちを選びますか?
99.9%の人が後者だと思います。
社会課題を解決する事業が儲からないとか、やる意義がないとか言ってるわけでは決してありません。ここではインセンティブ(自分の利益)で人は動くよね、という事を示したいだけです。
web3はインセンティブ革命を起こす!
で、実は僕は「全ての社会課題を解決する」ということをミッションに掲げている人間なのですが、そのために「全ての社会課題が解決され続けるエコシステムを作る」事を目標にしています。
どの時代も社会課題は生まれ続けるので、その都度解決される仕組みさえあれば、未来永劫大丈夫だろうと思い、その仕組み作りを目指しています。
これはweb3に出会う前から思っており試行錯誤していました。だからこそweb3に出会った時の衝撃は大きく、これは自分が成し遂げたいことを永続的且つ安心安全に実現できるんじゃないかと感じました。
僕はweb3の大きな革命は「インセンティブ設計を自動化できる」点にあると信じています。しかも、それを個人が自由に設計できてしまう点にあります。今までは法律などしかできませんでしたが、web3を使えば個人が誰でもできます。
NFTプロジェクトも、NFTを発行して10,000人が保有すれば、10,000人の目的が「このNFTの価値を上げること」に一致するのでインセンティブが揃うよね!という理屈です。株式会社の株式と論理は同じですが、それを簡単にどんな人にも配れちゃう仕組みになりました。
ただ、正直分散化して物事を進めるのは難しすぎるし、逆にプロジェクトの成功から遠ざかる可能性も大いにあります。なので実態としてファウンダーがぐいぐい引っ張って、NFTホルダーはコミュニティーの延長線上みたいな感じで見守ることが多いです。
そしてこれ、最大の課題は「ファウンダー側の最大のインセンティブ」と「大多数のホルダーの最大のインセンティブ」が異なる点にあります。
どちらも一番高い時期にNFTを売却することが最大のインセンティブなのですが、ほとんどの場合、セールで売り出した瞬間が一番高額になります。
となると、ファウンダー側はセール前まで頑張って、セールで販売した後は活動を辞めるか、省エネで運営することが最大の利益を享受できる方法になってしまい、大多数のホルダーは損をします。
株式会社はExitしないとファウンダーに何も報酬が発生しないので、Exitまでがむしゃらに頑張るわけです。これがVCから出資受けた時点でそのお金を全部自分のものにできるようになったら、頑張らないスタートアップが続出するはずです。
これは個人の善意や悪意の話ではなく、この構造だと人間なのでそういう行動を取ることは自然だよね、という考えです。
NounsDAOのインセンティブは凄い、そしてさらにその先へ
これを解決しているのが実はNounsDAOだとも書かれていました。
NounsDAO自体の説明は省きますが、NounsDAOはそのNFT売上を100%DAOにプールしていきます。ただこれだとファウンダーへの報酬が存在しないので、ファウンダーチームは10日に1つのNounNFTを貰えるスマートコントラクトが刻まれており、それが報酬となっています。ちなみにこれが続くのは5年間です。
これが画期的なのはNounNFTの価値が上がらないと、ファウンダーもホルダーもどちらもメリットがない点にあります。ファウンダーはNFTの売上は1円も貰わず、NFTのみを貰うので、その価格が最大になることが最大のメリットです。これ実はホルダーと同じなんです。ホルダーも自分で購入する側なのでNFTの売上は1円も貰わず、NFTのみを貰います。
だからこそ、ファウンダーとNFTホルダーのインセンティブが一致して、うまくワークします。それを最初にスマートコントラクトで刻んでおけば、それぞれが自分の利益の最大化へ向けて動けば勝手にプロジェクトが大きくなるという仕組みなんですね。いやー、NounsDAOはやっぱりすごい。
話をまとめます。
web3は人の手を介さないインセンティブ設計の仕組みを誰でも作れるようになった革命である
人は基本的に自分の利益の最大化のために動き、思想ではなく仕組みによって社会が変革される
NounsDAOのようにファウンダーとホルダーのインセンティブを完全一致させないと、どちらかが損する仕組みのままワークしてしまう
最初のスマートコントラクトを刻む時点で、そこを意識するべき
つまり、最初の設計が鬼ほど大切というわけです。
加えて、NFTやトークンを配ればインセンティブ設計やユーザーへの還元ができるとか、そういう考えではうまくいかないということでもあります。
NFTやトークンは仕組みの1つですので、もっと大きなステークホルダー全員のインセンティブ設計を考える必要があります。そしてユーザーはそこを見て、プロジェクトを判断する必要があります。
そこまで引っくるめて、DAOではなくDAEであり、スマートコントラクトに管理されたエコシステムの創造こそがweb3の素晴らしい点だと書いたと僕は解釈しました。(間違ってたらすみません、。)
DAEは、必ずしも意思決定者やプロジェクト推進者(リーダー)がいてはいけないということではありません。むしろリーダーがいた方がプロジェクトは進みます。ただ、リーダーが一つの役割であるべきです。エンジニアやデザイナー、マーケターと同様に”リーダー”という役割であって、全体のエコシステムの1つのパーツになります。
そして、それぞれが自分の利益のために動いたら結果的にプロジェクトも推進し、関わるチーム側の人間もユーザーも社会も良く循環していく。これこそがDAEであり、web3が作り出せる革命であると思います。
自分もこのエコシステムを作るために準備していきます。
«参考リンク»
・書籍:シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか
・著者Twitter:https://twitter.com/snakajima
以上、今日は書籍を読んで感じたことを書きました。記事が面白いなと思った方はぜひいいねやRT等していただけると嬉しいです!
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