おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日はweb3の基礎の基礎レポートということで「ビットコイン」について改めて解説します。よくある疑問20個に答えていく形式にしましたので、改めてビットコインについて改めて理解を深める機会にしてもらえればと思います。
前編は基本的な質問で、後編は技術的な質問となります。
それではどうぞ!
ビットコインって何?
誰がビットコインを作ったの?
なぜ「デジタルゴールド」と呼ばれるの?
中央管理者がいないってどういう意味?
どうやってビットコインは安全性を保っているの?
ブロックチェーンって何?
マイニング(採掘)とは何?
半減期(Halving)とは何?
なぜビットコインの価格は上がったり下がったりするの?
なぜ発行上限は2100万枚なの?
1. ビットコインって何?
● 仮想通貨の代表格
ビットコインは「仮想通貨」あるいは「暗号資産」の一種で、インターネット上でやり取りされるデジタルなお金です。2009年に運用がスタートして以来、世界中で注目されるようになりました。とりわけ「分散型台帳技術(ブロックチェーン)」を使い、特定の国家や企業の管理者が存在しないまま取引データを記録・維持している点が大きな特徴です。
● 第三者を介さずに送金できる
銀行振込やクレジットカード決済など、従来の仕組みでは必ず「金融機関」などの第三者を経由します。しかしビットコインは、ネットワーク参加者同士がお互いの取引を承認し合う仕組みになっており、中央のサーバーや管理者なしで送金が完結します。そのため、特に国境を超えた取引では、銀行手数料や為替の制約が相対的に低くなる利点があります。
● インターネット×暗号技術が支える新しい“お金”
ビットコインの本質は「インターネット上に存在する新しい形のお金」であり、そこには暗号技術が深く関わっています。具体的には「公開鍵暗号」「SHA-256ハッシュ関数」「P2Pネットワーク」など、複数の技術要素の掛け合わせによって成立しており、それらを総称して“ブロックチェーン”とも呼んでいます。
● 最初の仮想通貨ではないが、初めて広く普及した
実はビットコイン以前にも「デジタルキャッシュ」「電子マネー」を目指す試みはありました。しかし、仲介者なしで安全かつ分散的に“改ざん不能な取引台帳”を維持するのは難題でした。それを初めて大規模に実現し、実際に世界中のユーザーから価値を認められ流通したのがビットコインです。
2. 誰がビットコインを作ったの?
● 謎の人物「サトシ・ナカモト」
ビットコインの原案となる論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」は、2008年に“Satoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)”という名義で発表されました。日本人のような名前ですが、実際に誰なのかは分かっていません。一部では複数人のチーム説や特定の開発者説などが浮上しましたが、確証は得られていません。
● 2009年に最初のブロックを発掘
2009年1月、サトシ・ナカモトが「ビットコインのソフトウェア」を公開し、最初のマイニングを行いました。これがブロックチェーンの始まりであり、最初のブロックを「ジェネシスブロック」と呼びます。当初は数人の技術者たちが実験的にマイニングや送金を行う小さなネットワークでした。
● サトシ・ナカモトが残したもの
サトシ・ナカモトは2010年末頃に開発コミュニティとのコミュニケーションを減らし、2011年あたりには「もう他の人たちに任せる」といった趣旨のメッセージを残して去ったとされます。現在、ビットコインはサトシ・ナカモトだけでなく世界中の有志開発者たちによってメンテナンスが続けられています。
● 匿名であっても機能し続ける仕組み
考えてみれば、不思議な話です。創始者が誰か分からなくてもビットコインは動き続けています。むしろ、特定の個人・企業・政府による支配や“権威付け”に依存しないことを体現しているとも言えます。この点がビットコインの分散性と神秘性を際立たせています。
3. なぜ「デジタルゴールド」と呼ばれるの?
● 希少性が最大の理由
ビットコインは2100万枚という総発行枚数に上限が設定されています。これは金(ゴールド)が地球上で採掘できる量に自然の限界があるのと似た性質で、「希少性」が担保されているとみなされます。中央銀行が無制限に通貨を発行し続ける法定通貨とは違って、ビットコインはプログラム上で発行量が制限されているのです。
● 価値の保存手段
金は伝統的に「価値の保存手段(Store of Value)」として認知されてきました。同様にビットコインも、一部の投資家や企業が“長期保有”による資産の保全を期待して買い集めています。こうした動きがさらに「デジタルゴールド」という認識を強めています。
● インフレ耐性と国境のない流通
金が世界共通の価値を持つように、ビットコインも国境を超えて通用し得る点が「ゴールドっぽさ」を際立たせます。インフレ率はプログラムによって徐々に下がっていく(後述の「半減期」参照)ため、法定通貨よりもインフレ耐性が高いという見方をする人もいます。
● 反対意見やリスクもある
ただし「デジタルゴールド」という呼び方には批判もあります。金には数千年の歴史がある一方で、ビットコインは誕生して十数年しか経っておらず、ボラティリティ(価格変動)も激しい。あくまで“投機の対象”に過ぎないと見る向きも依然としてあります。
4. 中央管理者がいないってどういう意味?
● 従来型システムとの対比
銀行の送金やクレジットカード決済など、従来の金融システムでは必ず中央機関や管理サーバーが存在し、そこが取引を承認・監視します。一方でビットコインでは、世界中のコンピュータ(ノード)が同列の立場で「正しい台帳かどうか」を検証し、データを保持する仕組みを取っています。誰か一人が「これは正しい」とお墨付きを与えるわけではないのです。
● P2Pネットワーク(Peer-to-Peer)
ビットコインはP2Pネットワークによって動作します。P2Pとは、中央サーバーを介さず、ユーザー同士(ピア同士)が直接通信し合う方式です。ビットコインノードを立ち上げると、自動的に他のノードを探しに行き、取引やブロックの情報を交換します。
● 検閲耐性(Censorship Resistance)
特定の管理者が存在しないため、政府や企業が「この取引を止めろ」「口座を凍結しろ」と命令しても、ネットワーク全体を停止させるのは非常に難しいです。もちろん違法行為を完全に放置してよいわけではありませんが、少なくともシステム設計的には「誰かの意向で取引履歴が抹消される」ことが起きにくいようになっています。
● ルールはコンセンサス(合意形成)で決まる
「それでは誰がビットコインのルールを決めているのか?」という疑問も出てきますが、基本的には“ビットコインコア(Bitcoin Core)”というオープンソースのソフトウェアがベースとなり、世界中の開発者やマイナー、ノード運営者が意見を交わし合いながら改良を行います。大きな変更(フォークなど)にはネットワーク参加者の合意が必要で、合意を得られないと別の通貨として分裂することもあります。
5. どうやってビットコインは安全性を保っているの?
● 改ざんの困難さ
ビットコインは“ブロックチェーン”上で取引データを時系列に並べて管理します。もし過去の取引を改ざんしようとすると、そのブロックとそれ以降のブロックのハッシュ値がすべて変わってしまい、結果的に「ネットワーク全体が保持する台帳」と乖離を起こします。悪意ある参加者が改ざんを成功させるには、ネットワークの過半数以上の計算能力(51%攻撃)を掌握しなければならず、現実的に非常に難しいです。
● Proof of Work(PoW)
ビットコインネットワークはPoWというアルゴリズムを利用します。マイナーと呼ばれる参加者が膨大な計算を行って新しいブロックを作り、その作業量(ワーク)が正しいことを全ノードが検証します。膨大な電力と設備投資が必要なため、改ざんや不正を試みるコストが高騰し、ネットワークを安定的に維持できる仕組みです。
● UTXOモデルと公開鍵暗号
取引の管理方式であるUTXO(未使用トランザクション出力)モデルと、送金時のECDSA署名(秘密鍵・公開鍵方式)によって「正当な所有者以外がコインを使えない」「同じコインを二度使えない」などのルールが厳格に守られます。どんなトランザクションも、正当性が検証されない限りブロックに取り込まれません。
● 分散型ネットワークの強み
ビットコインは世界中に無数のノードが存在し、単一のデータセンターなどに依存しません。そのため、サーバーが故障してもネットワーク全体が止まるわけではなく、自然災害や政治的圧力に対しても耐性が高いと言われています。また、マイナーが地理的・政治的に分散しているほど、ハッシュパワーも分散されるのでセキュリティが増します。
6. ブロックチェーンって何?
● 一連の「ブロック」が鎖のようにつながる台帳
ブロックチェーンとは、ビットコインの取引データを一定サイズでまとめた「ブロック」を時系列に連結(チェーン)させたデータ構造です。各ブロックは「前のブロックのハッシュ値」を含むため、チェーンが崩れると改ざんが検知されます。
● “改ざん不可”と呼ばれる仕組み
それぞれのブロックには、ブロック内トランザクションをまとめたマークルルート(Merkle Root)と呼ばれるハッシュ値が入っています。もしトランザクション1つでも改ざんされると、マークルルートが変わり、さらにそのブロックのハッシュ値も変わり…というふうに連鎖して不整合が起きます。これがブロックチェーンの強固さの要です。
● ブロック生成の手順
マイナーが取引(トランザクション)を集めて候補ブロックを作り、そのブロックヘッダー(前のブロックハッシュ、マークルルート、タイムスタンプ、ナンスなど)をSHA-256で二重ハッシュして「目標値以下のハッシュ」を探します。これに成功するとブロックが“正当”と認められ、チェーンに追加されます。
● ビットコイン以外でも応用
ブロックチェーンという技術はビットコイン以外にも使われています。イーサリアムなどの暗号資産や、サプライチェーン管理、投票システムなど様々な分野で「分散型で改ざんされにくい台帳」として活用が検討されています。しかし、ビットコインのブロックチェーンはその中でももっとも歴史があり、実運用が長いことで「最も安定しているチェーンのひとつ」と言われます。
7. マイニング(採掘)とは何?
● ネットワークを動かすエンジン
「マイニング」とは、ビットコインネットワーク上のトランザクションをまとめてブロックを作り、“正当なブロック”としてチェーンに加える作業のことです。膨大な計算資源を投入して“ナンス(Nonce)”という値を探し出し、ブロックヘッダーのハッシュ値が難易度ターゲット以下になるように調整します。
● マイニング報酬
この作業を最初に成功させたマイナーは、新規発行されるビットコイン(ブロック報酬)と、そのブロックに含まれるトランザクションの手数料を報酬として得ます。報酬額はおおむね4年ごと(21万ブロックごと)に半減する仕組みで、当初50BTCだった報酬が25BTC、12.5BTC、6.25BTC…と減少し続けています。
● ASICによるハッシュレート競争
マイニングの難易度は高く、現在はASIC(特定用途向け集積回路)によって極めて効率よくSHA-256ハッシュを計算する装置が用いられています。かつては個人のPCでもマイニングが可能でしたが、今では巨大なマイニングプールが世界各地にデータセンターを構え、莫大な電力を消費して日々ブロック生成を競い合っています。
● ネットワークセキュリティとマイナーの役割
マイナーが正直にブロックを作り続ける限り、ネットワークは正常に機能し、取引が承認されていきます。一方、もし不正を企むならば莫大な計算能力を用いてチェーンを改ざんし、累積難易度を抜かなければいけません。しかしそれは極めてコストが高く、成功するメリットよりも損失のほうが大きくなるため、結局は「正直にマイニングした方が得」というインセンティブ構造になっているわけです。
8. 半減期(Halving)とは何?
● 約4年ごとにマイニング報酬が半分になる仕組み
ビットコインのブロック報酬(新規発行ビットコイン量)は約21万ブロックごとに半分に減らされます。1ブロックの生成目安が10分なので、21万ブロックは約4年かかる計算です。そのため、4年ごとにビットコインの供給量が大きく減少するタイミングが訪れ、それを「半減期」と呼びます。
● 過去の半減期
2012年:50BTC → 25BTCに減少
2016年:25BTC → 12.5BTC
2020年:12.5BTC → 6.25BTC
2024年:6.25BTC → 3.125BTC
● 価格への影響
過去の半減期の前後では、ビットコインの価格が大きく上昇した局面が見られました。ただし、半減期が直接価格を上げるわけではなく、「新規の供給量が減る=需給バランスに変化が起こる」という点で、投資家の心理や市場の期待が膨らむ側面もあります。一方で、「次の半減期も同じように価格が上がる」とは限らず、市場環境やマクロ経済状況など多くの要因が絡んでくるため単純化はできません。
● インフレ率の低減
半減期を繰り返すごとに、ビットコインの新規供給量(インフレ率)は徐々に低下していきます。発行上限2100万枚という縛りと相まって、「長期的な希少性」が担保される仕組みとして設計されています。将来的には新規発行がゼロになる(2140年ごろ)見込みですが、その後はマイナーが「トランザクション手数料」を主な収益源としてネットワーク維持に当たると想定されています。
9. なぜビットコインの価格は上がったり下がったりするの?
● ボラティリティの高さ
ビットコインは、誕生から十数年程度の歴史しかなく、株式や金など伝統的資産よりも市場規模が小さいため、価格変動が大きくなりやすい傾向があります。一度ニュースや投資家の思惑で急激に買いが殺到すると大幅に値上がりし、逆に規制強化やネガティブな報道が出ると大幅下落することも珍しくありません。
● 供給量の制限
前述の通りビットコインには2100万枚という上限があるため、需給バランスが崩れると価格が大きく動きやすいです。半減期が迫るたびに「供給量が減る」→「希少性が高まる」という見方から買いが入りやすくなる面もあります。ただし、これはあくまでマーケットの心理的側面が強く、必ず価格が上がるわけではありません。
● 機関投資家・企業の参入
近年、機関投資家や大手企業がビットコインに投資するケースも増えています。たとえばマイクロストラテジー社が大量のビットコインを購入したり、テスラ社が購入したりといったニュースがあれば、市場にとっては「ビットコインがより正式な資産として認知された」というポジティブな材料になり、価格が上がる要因となります。
● 規制・ニュースの影響
各国の規制強化や、取引所の破綻、セキュリティ問題などが報じられると、投資家心理が冷え込んで売りが加速し、価格が急落することがあります。逆に、「法整備が整い、投資家保護が進む」というニュースが出ると、安心感から資金が流入することもあります。ビットコインはまだ新しい市場であるため、情報の影響を受けやすいのです。
10. なぜ発行上限は2100万枚なの?
● サトシ・ナカモトの設計思想
サトシ・ナカモトは「貨幣の発行量を恣意的にコントロールできる中央銀行の仕組みに対する問題意識」を持ち、ビットコインでは上限を固定し、自動的にインフレ率を低下させる設計をしました。これによって「長期的に希少性が保たれる通貨」を目指したわけです。
● 半減期と絡めた供給プラン
発行上限が2100万枚という数字は、「初期のブロック報酬が50BTC」「10分に1ブロック生成」「21万ブロックごとに報酬が半減」というパラメータから算出されます。理論上、2140年頃にすべてのビットコインが採掘完了し、その後は新規発行されません。
● インフレと比較しての特徴
中央銀行が行う金融政策では、通貨供給量を増やして景気刺激を図ったり、逆に引き締めたりと柔軟に対応できます。しかしビットコインは発行総量が固定であり、外部からの恣意的な介入は原則不可能です。これが「インフレを意図的に抑制している」という評価につながり、金(ゴールド)のような希少価値が支持される一因となっています。
● どんな問題点がある?
一方で「需要が急増して価格が極端に上がったら、一般生活に不便ではないか」という声もあります。また、価格がボラティリティに大きく影響される点を「通貨としての安定性」に欠けると見る意見もあるでしょう。さらに、マイニング報酬がゼロになったときに十分な手数料インセンティブでネットワークセキュリティを維持できるのか、という将来的課題も指摘されています。
まとめ:ビットコインの基礎を理解する第一歩
ここまで、ビットコインに関する10の基本的な疑問について解説してきました。ビットコインが生まれた背景や創始者の謎、なぜ「デジタルゴールド」と呼ばれるのか、そしてどのように安全性や希少性を保ちながら動いているのか——こうした点を押さえるだけでも、ビットコインに対する理解がグッと深まるはずです。
次回(後編)では、さらに技術的な仕組みや専門的な話題にも踏み込んでいきます。具体的には「鍵の生成とアドレスの仕組み」「UTXOモデル」「P2Pネットワークでの情報伝搬」「フルノードとSPVノードの違い」「ブロック構造や難易度調整」「51%攻撃」「ソフトフォークとハードフォーク」などに関して、もう少し専門的な視点から解説します。
ビットコインは複雑に見えますが、根本には「誰か一人を信頼しなくてもシステムが動く設計」や「数学的裏付けで改ざんを防ぐ仕組み」があり、その上に経済的なインセンティブが組み合わさっています。
この前編記事が、読者の皆様にとってビットコインを体系的に理解する第一歩となれば幸いです。
免責事項:リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。また、記事中にDapps、NFT、トークンを紹介することがありますが、勧誘目的は一切ありません。全て自己責任で購入、ご利用ください。
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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