おはようございます。
web3researcherの三井です。
今日はここ数日間で話題の「BinanceとFTXの買収騒動」についてリサーチしました。
※尚、執筆時(日本時間で2022年11月10日朝7時半)時点での情報であること。刻一刻と変化する情報のため、閲覧時点では誤った情報になっている可能性があるのでご了承ください。
«目次»
1、大まかな経緯
2、騒動の真意と今後を考察
3、web3はまやかしなのか
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大まかな経緯
色々な記事やツイートを確認し、大まかな経緯をまとめました。(現段階で公開されている情報をまとめているので多少の齟齬あるかもしれません。)
■登場人物の紹介
Binance:世界最大の仮想通貨取引所。2017年に創業。
Binance CEO:Changpeng Zhao (通称:CZ)
FTX:世界第2位の仮想通貨取引所。2019年に創業。Binanceから出資を受けている。
FTX CEO:Sam Bankman-Fried (通称:SBF)
Alameda research:FTX CEOのSBFが2017年に創業したFTXとの姉妹会社
(画像引用先はこちら。左がSBF氏で右がCZ氏。)
■超ざっくり経緯
Binance CEOのCZ氏がFTXの独自トークンFTTの大量売却を発表。(11/7)
FTTの価格暴落に焦ったFTXユーザーが資金を引き出しまくる。
SBFはFTXの経営が立ち行かなくなりそうで、Binanceに助けを求める。
Binanceは買収の基本合意を成立(11/9)
Binanceは財務状況を見た結果、買収を断念すると発表(11/10)
では、なぜこのような事が起きたのかをもう少し詳しく解説していきます。
■詳細の経緯
元々は協力関係にあった。
Binanceは2017年に創業、FTXは2019年に創業。FTXにBinanceは出資している。
次第に関係悪化
FTXが急激に成長し、2~3年でBinanceに次ぐ世界第2位の仮想通貨取引所になった。
そして、FTX CEOのSBFは仮想通貨の規制を自社に有利な方向に進めるために政治家を支援すべきと考える。
その結果、バイデンへの献金額2位となるほど、政治界で影響力を高める。実際に仮想通貨規制の話し合いの際には意見を聞かれるほどの存在となる。
今年の10月には仮想通貨の規制に関してのレギュレーション提案を発表し、賛否両論も巻き起こしていた。(その一つにDeFiはKYCを必須にするべきだと主張し、賛否が起こっていました。)
アメリカの規制へ関与できる存在まで成長したFTX(SBF)に対して、Binance(CZ)は中国系の企業なので、アメリカ政府に近づくことができない。
BinanceはFTX株を売却し、その資金の一部を独自トークンのFTTで受け取っていた。
姉妹会社のAlamedaのB/Sが暴露される
SBFが2017年に創業し、FTXとも姉妹会社でもあるAlamedaの財務状況がやばいんじゃないかという記事がアメリカ大手メディアによって暴露される。
その内容をざっくり言えば、FTXのトークンであるFTTトークンを担保に大量の資金を借入し、その資金で仮想通貨の購入するというFTTトークンの価格が暴落したらやばいというハイリスクの財務状況であった。
これは「flywheel」と呼ばれるスキームに近いのではないかと指摘される。
独自トークン発行→マーケティング等でトークンの価格向上→会社としての保有トークンの価格が向上するので数字状のB/Sは膨らむ→投資家がそのB/Sを評価して資金投下→その資金でさらにトークンの価値を向上させる、、の繰り返し。
ただ、これには欠点がある。それは独自トークンに流動性がないこと。そもそもロックされている(一気に売れない)ことも多く、且つ一気に売れたとしても一気に売ると価格が暴落してしまう。例えば100億円分のトークンを保有していても、実際に売ると数億円にしかならない場合も多い。
なので、これは見せかけで資金を回しているだけで実際は非常に危ないモデルだとされている。
今回のAlamedaも保有しているFTTトークンを担保に借入を行っていたので、かなり危ない状況だった。
CZがFTTを大量に売却すると発表
(おそらくFTXの状況を悪化させるために意図的だと言われていますが、真意はわかりません)
CZがBinanceが保有しているFTTを全て売却すると発表。
その結果、FTTの価格が暴落することを危惧した投資家もFTTを大量に売却し始める。
FTT価格が暴落。暴露されていたAlamedaの財務状況と照らし合わせて、実はAlamedaもFTXも経営破綻するほどやばいのではないかと推測が立ち始める。
SBFは必死に否定するが、FTTの価格は暴落し、FTXはアナウンスなしで出金が停止となる。
SBFがBinanceに助けを求める
BinanceはFTXから助けを求められたことを明かし、買収する基本合意を締結したことも発表した。
但し、この合意契約は今後の財務状況を確認し次第Binance側がいつでも撤回できる内容であった。
翌日、「財務状況見たら手に負えないレベルだったので、やっぱり買収やめます」とBinance側が正式発表。
今ここ。
騒動の真意と今後を考察
ここまでざっくりとした経緯をまとめてきました。そしてここからはこの騒動の真意と今起きている余波、今後起こるかもしれないことを考察してみます。
■騒動の真意
Binance(CZ)側はやはりFTXを脅威に感じており、失速させる目的でFTTの売却を仕掛けたのではないかと多くの人が考察している。
本人はあくまで資産の整理のためだと主張しているが、それは当たり前で、表立ってFTX潰すためにやりました!なんて言えるわけがない。
Alamedaの財務状況が暴露され、FTTの大量売却を発表すればこうなることはわかっていたはず。
■買収断念の真意
そもそも買収する気だったのか、買収するふりしてしない気だったのかはもちろんわかりません。有権者の中でも意見が分かれています。
ただ、買収が成立した場合のリスクもいくつか指摘されていました。
FTXの負債を引き受けたり、FTXの投資家から訴訟を起こされたりするリスクもありますが、その最たるリスクが「独禁法への抵触と注意」です。
世界第1位の仮想通貨取引所が世界第2位を買収するとなると、圧倒的な強者ができてしまうので、政府からの圧力や規制が想定されます。
特にSBFは政府とのつながりが強いので、Binance側を恨んでいたらアメリカ政府からより強い規制がかけられることが想定されます。
また、分散化がキーワードのweb3業界において、圧倒的な中央集権の企業はユーザーからの反発も招きかねません。
そもそもBinanceは既に世界第1位なので、FTXが失速してくれる(経営破綻までいくかも?)だけでOKなので、わざわざ負債と訴訟リスクと独禁法のリスクとユーザーからの反発までを加味して買収する必要がなかったと考えられます。
なので個人的には、そもそも買収する気はなく、最初のFTT売却からこの着地までを想定していたと思っています。
■世界で起こっている余波
まず仮想通貨全体が暴落してますね😭😭😭😭😭😭😭😭😭
特にSolana価格が半減しています。
これはAlamedaがSolana供給量の10%ほどを保有していたので、Alamedaが資金繰りに困り一気に売却するのでは?と思った投資家が一斉に売却したためです。
■今後の展望
Binanceは手を引きましたが、FTXとAlamedaの財務状況が火の車であることは変わりません。ここがどうなるのかが注目されています。
追加出資や融資は難しいと思うので、自力で立ち直るか別の企業に買収されるかしかないと思っています。
ただ、自力で立ち直れるなら攻撃してきたBinanceに頼ることはないと思うので、おそらく別の企業に買収されるしか道はないのでは?と思っています。
その企業が現れるのかが注目されていますが、そもそも経営的に破綻している財務状況やスキームの場合は、買収するメリットよりもデメリットの方が大きいため、このまま経営破綻に陥る可能性も考えられます。
そうなるとFTXに預け入れている資産が全て引き出せなくなる可能性があり、AlamedaやFTXから出資されている別のプロジェクトにも連鎖的に影響が出てくることが想定されます。
Alamedaは有望なL1プロジェクト(AptosやSuiなど)にも出資しています。
最悪のケースは、別プロジェクトにも影響が出て、連鎖的に経営破綻に追い込まれる金融機関やVCが生まれ、さらに仮想通貨業界全体が落ち込むことですね。
web3はまやかしなのか
ここまで、騒動の経緯と真意を自分なりに情報を集めてまとめてみました。あくまで現時点での情報であり、公開されている情報を整理したものなので、ご了承ください。
さて、またしても訪れた仮想通貨業界の大暴落。
しかもこれはウクライナ戦争のような外的要因によるものではなく、完全に構造上の闇で起きた問題です。LUNAよりも深いweb3の問題点を浮き彫りにした気がします。
それは”期待でお金が集められてしまう”ことです。
Tokenの価値を担保にして資金を借りるのは、未上場のスタートアップがその時の時価総額(評価額)を担保にしてお金を借りるようなものなので、凄まじく曖昧なものです。
僕個人は変わらずweb3が好きで、ここに未来があると思っていますが、web3なんてまやかしだという人たちの主張にも真摯に耳を傾けなければいけないとは思っています。
ただ、これを機にあらゆる規制が入ったりすると、それはもはや分散化ではなくなってしまったり、理想が体現できなくなる可能性もあるので、その辺りは注目していきたいです。
ギークな一部の人間が使える場所じゃなく、誰もが安心安全に使えてこそ世界を変革する技術です。そう考えるとやはり、web3はまだまだ未成熟な市場ですね。
僕も引き続きリサーチし、web3の理想を体現していくようなプロジェクトが作れるように頑張っていきたいと思います。
以上、かなり時間をかけて作った記事なので、面白いなと思った方はSNS等でシェアいただけると非常に励みになります!お読みいただきありがとうございました!
(※リサーチした情報を精査して書いていますが、個人運営&ソースが英語の部分も多いので、意訳したり、一部誤った情報がある場合があります。ご了承ください。)
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mitsui @web3Research
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