おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日はweb3の基礎の基礎レポートということで「銀行」について深堀します。
ぜひ最後までご覧ください!
はじめに
DeFiを理解するには「銀行」の構造的理解が必要
一見“当たり前”に見える銀行の機能はどれだけ複雑か?
“信用”のインフラとしての銀行
銀行の課題
後編へのつなぎ:「ではDeFiはこれらをどう変えうるのか?」
🧵TL;DR
銀行は「預金と貸出」だけでなく、決済・為替・リスク管理・仲介・保証など多面的な機能を担っている。
それらを通じて、銀行は社会の「信用インフラ」として機能しており、単なる「金庫」ではない。
銀行にはライセンス制度と国や規制当局による厳格な監督があり、だからこそ安心して資産を預けられる仕組みが整っている。
「信用創造」により、社会全体のお金の総量を増やし、経済活動を活性化させる役割がある。
一方で、中央集権的な構造がもたらすリスク(リーマン・ショック、SVB破綻など)や金融包摂の不十分さ、コスト構造の高さといった課題も存在する。
次回は、DeFiがこうした銀行の機能をどのように再定義し、どこまで実現しているのかを掘り下げる。
はじめに
近年、暗号資産やブロックチェーン技術の進展に伴い、金融の世界でも「DeFi」という新しい波が生まれています。イーサリアム上で動くスマートコントラクトを活用し、既存の金融機関を介さずに資産の保管や送金、融資ができる――そんな未来が少しずつ現実味を帯びてきました。
しかし、これらの「DeFi」の動向を理解しようとしたとき、「銀行ってそもそも何をしているの?」という根本的な問いを理解する必要があります。
私たちは日常的に「銀行」と関わりを持っています。
会社員であれば給与の振り込み先は銀行口座ですし、家賃や光熱費の引き落としも銀行口座から行われることがほとんどです。大きな買い物をするときには住宅ローンや自動車ローンを利用し、海外旅行のときは現地通貨に両替をする。そうした日常の多くが、銀行を中心とした金融インフラによって支えられています。
ところが、「銀行って何のために存在していて、どんな仕組みで動いているのか?」と改めて問われると、意外と答えに詰まってしまう人が多いのではないでしょうか。
「預金を集めて貸し出している」「口座を持てばお金が安全に保管できる」――これらはもちろん正しいのですが、銀行が担う機能は決してそれだけではありません。
為替や決済といったインフラもあれば、信用をつなぐ仲介・保証、さらにはリスク管理や社会全体の資金循環を支える「信用創造」という高度な側面もあります。
DeFiは、そうした銀行の機能を分解し、「よりオープンでグローバル」「より個人が主導的に管理できる」形に再設計しようとしています。しかし、その意味合いを正しく理解するためには、まずは「従来の銀行」が何をしてきたのかをしっかりと把握する必要があります。
そこで前編では「そもそも銀行ってなにをしているのか?」をテーマに、銀行の仕組みと役割を丁寧にほどいていきます。後編では、DeFiがどのように銀行の機能を再現・再設計しているのかを解説し、DeFiと銀行が今後どう共存・競合していく可能性があるのかを考察していきます。
それではまず、銀行の機能を俯瞰してみましょう。
DeFiを理解するには「銀行」の構造的理解が必要
DeFiの説明ではよく、「銀行を通さずに送金ができる!」「スマートコントラクトで自動的に融資と返済ができる!」といった説明文が出てきます。もちろん、そうした新しい仕組み自体は非常に魅力的です。
しかし、既存の銀行が果たしている役割は思いのほか多岐にわたります。さらに、銀行業の裏側には、国家からのライセンス(免許)や国際的な資本規制・監査体制などが網の目のように張り巡らされており、単に「人からお金を集めて、別の人に貸し出す」だけではありません。
銀行が持つ「社会インフラとしての役割」を理解することは、DeFiが本当に銀行を置き換えられるかどうかを考える上で避けて通れないポイントです。
たとえば、DeFiが即時決済やスマートコントラクトの自動執行を可能にするとしても、「社会全体の信用」をどう支えるのか、「リスク管理」は誰がどのように行うのか、といった論点は非常に重要です。
まずは、銀行の機能を一つひとつ分解して整理するところから始めてみましょう。
一見“当たり前”に見える銀行の機能はどれだけ複雑か?
銀行とは端的に言えば「お金を預かってくれる場所」「貸し出してくれる場所」だと思われがちです。しかし、私たちが当たり前に受けているサービスは、多様な業務の集積によって支えられています。ここでは、銀行の主要な役割を大きく6つに分けてみます。
預金
顧客から資金を預かり、安全に保管する。
預かった資金に対して利子を支払う(定期預金など)。
銀行側は顧客資産の安全性を守るために、自己資本比率を一定以上保ち、国債などの安定資産を保有する。
貸出
預金を元手に企業や個人に融資を行い、金利を受け取る。
このプロセスが実質的に「信用創造」の源泉となる(後述)。
返済リスクを見積もって金利を設定したり、担保を取ったりする。
決済
口座間の送金や振込、公共料金の引き落としなど、さまざまなお金のやり取りを円滑に行うインフラを提供。
小切手や手形の決済手続きも行う。
日常の銀行振込だけでなく、企業間の膨大な取引決済も支える。
為替
通貨を交換するサービス(例:円からドル、ドルからユーロなど)。
海外送金や貿易決済なども含まれる。
各国の金融システムや為替レート市場と連携しつつ、手数料や為替差益を得る。
リスク管理
貸出先の信用審査、担保評価、債権管理などを行う。
市場リスク(金利や為替変動リスクなど)や流動性リスク(預金者が一斉に資金を引き出すリスク)にも備える。
不良債権が増えれば銀行自体が破綻する可能性もあるため、厳格な管理が求められる。
仲介・保証
第三者間の取引を安全に行うための信頼の橋渡し役として機能。
たとえば手形や小切手は、銀行が「額面を支払う意思と能力」を保証しているからこそ使用できる。
大型プロジェクトの融資における信用状の発行など、多数の利害関係者をまとめ上げる調整・交渉機能。
こうした役割は、私たちの日常ではあまり意識されないまま利用されています。しかし、これらがいかに複雑で高度なシステムかを改めて見直すと、既存経済において重要な枠割を担っていることがわかります。
例えば、決済のインフラは、ただ自分と相手の口座を数字上で動かすだけではありません。銀行間での清算システム(全銀システムなど)が動き、平日はリアルタイムで何兆円もの資金が行き来しています。これが一瞬でも止まってしまえば、企業は取引に必要な支払いができなくなり、経済活動は大きく混乱してしまいます。
さらに、リスク管理はまさに「お金を扱う仕事」の根幹です。貸し倒れのリスクや市場の変動を見越して資産構成を調整しなければ、銀行はあっという間に破綻するかもしれません。私たちが安心して預金を預けられるのも、そうした高度なリスク管理体制が背景にあるからです。
“信用”のインフラとしての銀行
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