【Abstract】Pudgy Penguinsチームが構築する消費者向けL2チェーン / ZK Stackを利用しネイティブチェーン抽象化を実現 / 2025年1月にメインネット公開予定 / @AbstractChain
実はAbstract上でAIエージェントプロジェクトを準備中です。
おはようございます。
web3リサーチャーのmitsuiです。
今日は「Abstract」についてリサーチしました。
🟢Abstractとは?
⚙️技術スタック
✨2025年1月にメインネット公開予定
💬Abstractでプロジェクト準備中です!
🟢Abstractとは?
「Abstract」はPudgy Penguinsの親会社であるIgloo Inc. が開発したレイヤー2ブロックチェーンです。zkSyncのZKスタックとEigenDAを使用し、消費者中心のブロックチェーンエクスペリエンスの提供に重点をおいています。
元々、Frameと呼ばれるNFTやクリエイターエコシステムに特化したL2チェーンを2024年6月に買収したところからスタートしました。旧Frameチームを迎え入れ、名称変更し、Abstractが誕生しました。
さらに、2024年7月にはFounders Fundなどから$11Mの資金調達を完了しています。
Abstractの最大の特徴はそのコンセプトにあります。
上でも少し触れましたが「消費者向けのブロックチェーン」を目指しており、より多くの人が意識せず普通に利用できるブロックチェーンを目指しています。
Abstractチームは、現在の汎用ブロックチェーンはあらゆるジャンルを横断して成長させているため、マスに届けるという目標を達成できていないと指摘しています。
そのため、Abstractはフェーズに分けて明確にユースケースを絞って進めていきます。
フェーズ1:裁量的支出(最初の5,000万人)
フェーズ2:必要な支出(2億5,000万人)
フェーズ3:必要不可欠な支出(それ以降)
この3つのフェーズに分けて進めていくことを明言しています。
①フェーズ1:裁量的支出(最初の5,000万人)
裁量的支出または余暇支出を中心に構築された消費者重視のビジネス、言い換えれば、人の自由時間を占めるアプリケーションを中心に展開されます。
例えば、以下のようなユースケースを想定しています。
ゲーム
ソーシャル(クリエイタープラットフォーム)
トレーディング
カジノ
賭け
デジタルコレクタブル
トークン化された文化
②フェーズ2:必要な支出(2億5,000万人)
最初の5,000万人のユーザーを突破すると、焦点は必要な支出の一部を獲得すること、つまり自由時間以外の生活のさまざまな側面に暗号資産を統合することに拡大します。
例えば、以下のようなユースケースを想定しています。
DeFi
DePIN
Cloud
デジタルメディア
デジタルコマース
Payment
③フェーズ3:必要不可欠な支出(それ以降)
必要支出の障壁を乗り越えると、必須支出に到達します。これは、消費者向けアプリケーションが必須事項を中心に構築され、ユーザーがオフチェーンで実行できるあらゆることをオンチェーンで実行できるようになるときです。
例えば、以下のようなユースケースを想定しています。
オンラインバンキング
クレジット
トークン化(RWA)
保険
データ
IoT
身元
投票
このように3段階で分けて都市建設のように徐々にエコシステムを拡大していくことで、消費者向けのブロックチェーン構築ができると提唱しています。
⚙️技術スタック
続いて、これらの技術を支える技術スタックを見ていきます。
ZK Stack
まず、L2構築基盤はZK Syncの出しているL2開発キットであるZK Stackを利用しています。これによってZk Rollupを採用しており、後述するチェーン全体のネイティブ抽象化を実現しています。
ZK Syncは少し前からElastic Chain構想を掲げており、自身が運営するZKsync Eraだけでなく、ZK Stack構築チェーンであるZK Chainとの相互運用性を実現するマルチチェーン構想を掲げています。イメージとしては、Optimism Superchainです。
Abstractもこのチェーンの1つとして、他のZKsyncエコシステムとも密に連携していくことが予想されています。
Igloo Inc.のCEOであるLucaはZksyncを採用した理由について以下のように述べています。
「ZKsync は、私が必要とするすべてのことを実行します。アカウントの抽象化に関しては、彼らははるかに先を行っています。手数料は低く、取引は高速で、その技術スタックは、私たちが構築したいタイプのチェーンを強化すると信じています。」
(引用:Cultural Innovation in Blockchain: Luca Netz on ZKsync)
余談ではありますが、Zksyncは直近でDeFi向けの大型リワードの提供をしているため、TVLが過去最高に盛り上がっています。これからAbstract以外のZK Chainも続々とリリースされていくとのことで、より盛り上がっていくかもしれません。
Abstract Global Wallet
上述した通り、Abstractは消費者向けブロックチェーンを目指しており、ブロックチェーンをより多くの人が意識せずに利用できる状態を目指しています。よって、その核にある価値観はチェーン抽象化です。Abstractという名前の通り、チェーンを意識しなくても利用できる状態を目指しています。
そのために利用した技術スタックがZK Stackであり、具体的なユーザーインターフェースとして肝となるのが「Abstract Global Wallet(AGW)」です。
AGWはAbstractが提供するウォレットサービスですが、以下の特徴を持ちます。
メール、ソーシャルメディア、またはパスキーを使用してウォレットを作成
ガススポンサーシップによるペイマスター
ソーシャルリカバリー
複数の署名者の設定
AGWはコントラクトウォレットであり、以下のような仕組みで作成されます。
EOA の作成: Privy Embedded Walletsを利用し、ユーザーが電子メール、ソーシャル アカウント、またはその他のログイン方法でサインアップすると、EOAウォレットが内部的に作成されます。
スマート コントラクト ウォレットの作成:スマート コントラクト ウォレットがデプロイされ、承認された署名者として EOA アドレス (前の手順から) が提供されます。
生成された秘密鍵は、 シャミアの秘密分散 アルゴリズムを使用して 3 つのシャードに分割され、3 つの異なる場所に保存されます。 秘密鍵を再構築するには、 3 つのシャードのうち2つが必要です。
3 つのシャードは次のとおりです。
デバイス共有:このシャードはユーザーのデバイスに保存されます。ブラウザ環境では、Privy iframe のローカル ストレージ内に保存されます。
Auth Share:このシャードは暗号化され、Privy のサーバーに保存されます。ユーザーが元のログイン方法でログインすると取得されます。
リカバリ共有:このシャードは、ユーザーが選択したバックアップ場所 (通常は Google ドライブや iCloud などのクラウド ストレージ アカウント) に保存されます。
また、開発者はAGWをSDKで簡単に埋め込みができるため、簡単にアプリケーションの開発が可能となっています。
Panoramic Governance(PG)
最後はガバナンス面における特徴です。
これはAbstractエコシステムにおいてガバナンス参加とプロトコルの成長の両方を奨励するために設計された新しいメカニズムです。
これまでのL2ブロックチェーンはトランザクション数が増えるほど、シーケンサー収入によってチェーン側の収益は上がりますが、それに貢献したアプリケーションやユーザーへの分配はありませんでした。これはチェーンの成長に対してのインセンティブ不一致が生じます。PGはこれらのインセンティブを一致させる仕組みです。
この仕組みはアクティブなガバナンス参加者(ユーザー)に報酬を付与するActive Governance Participationと、ネットワークに最も貢献するプロトコルに報酬を与えるEcosystem Emissionsの2つによって成立します。プロトコルの選定はユーザーによる投票によって決定されます。
このように報酬を分配することで、チェーンエコシステムに関わる全員のインセンティブを一致させ、成長させていくことを目指しています。
また、重要な点はこの収益分配をシーケンサー収入で行う点です。多くのブロックチェーンはここをネイティブトークンで実施しますが、その場合は実需と異なる時間軸でトークンが発行されインフレが進むと同時に架空の利回りとなる可能性も高いです。Abstractは実需と共に成長する仕組みを構築しています。
✨2025年1月にメインネット公開予定
そんなAbstractですが、現在はテストネットが公開されており、2025年1月にメインネットを公開すると発表しています。
もう間も無くかと思いますが、つい先日メインネットのインセンティブプログラムが発表されました。
仕組みはシンプルで、Abstractアプリを使用し、Abstract Global Wallet経由でオンチェーン体験を行うユーザーとクリエイターがXPを獲得します。また、ビルダーはアプリの成功に応じて報酬を受け取ります。XPは先週のオンチェーン アクティビティに応じて毎週月曜日に更新されます。
Abstractはテストネットでインセンティブをつけていません。多くのブロックチェーンは預け入れの資金に対してインセンティブをつけたテストネット公開を行いますが、一切行っていません。それは上述した通り、消費者向けブロックチェーン構築には順番があり、本当に価値あるアプリケーションを作成することが大事だと考えているからです。
よって、メインネットのインセンティブプログラムもシンプルにオンチェーン体験をしたユーザーやより多くのユーザーを巻き込んだ開発者にXPが配布されるという形を取っています。
また、Abstractの特徴の1つはユーザー毎のポータル画面がしっかりと作成されていることです。ウォレットの作成とアセットの確認、スワップやトレード、アプリケーションの発見、そしてリワードの確認までを1つのポータルから進むことができます。
メインネットインセンティブもリワードページから確認でき、貢献に応じてバッジも獲得できるそうです。
尚、トークンの情報は公開されていません。Pudgy Penguinsプロジェクトに関連してリリースされたミームコインの$PENGUが何かの役割を担うのではないかと噂されていますが、それらの情報は一切不明です。
💬Abstractでプロジェクト準備中です!
最後は考察ですが、その前にお知らせです。
実はAbstract上でAIバーチャルヒューマンをリリースするプロジェクトをサポートしています。まだあまり情報公開されていませんが、今後続々と公開されていく予定ですので、ぜひ随時僕のXを確認いただけると嬉しいです!
さて、Abstractはいかがだったでしょうか。
自身で携わっているということも当然ありますが、客観的に見てもとても注目されているチェーンだなと感じます。何よりもコンセプトがはっきりしており、それに一貫した技術やUIを実装しています。
昨今のブロックチェーンプロジェクトはより多くのインセンティブによってユーザーを惹きつけて数字を稼ぐことが多いです。初期ブーストとしてそれは間違ってはいないと思いますが、結局は中長期的に定着してくれないと意味がありません。
Abstractは掲げているビジョンに対するフェーズ展開を着実に行なっていこうという意思を感じます。
以前、CEOのLucaがインタビューで、Abstractは1つのスーパーアプリのようなものだと発言していましたが、その感覚で見るとそれぞれの施策がとても理解しやすいように感じます。
Abstractポータルを作成し全てのユーザーインターフェースを統一しているのも、アプリケーションに注力しているのも、インセンティブに過度な仕組みを入れていないのも、一貫しています。
個人的にはポータルにかなり力を入れている点がとても興味深いと思っており、チェーン全体の入り口を自分たちで握れるようになるので、今後いろいろな展開が考えられます。
例えば、トップページ枠の掲載オークション、埋め込みスワップやトレードのフィー収集などのウォレットが持つ収益モデルを構築できます。そして、おそらくそれらの収益もシーケンサー収益と同様にエコシステムに還元する仕組みを作るのではないかと思います。
そして何より、それらを牽引するのが最もマスに浸透したweb3ブランドと言っても過言ではないPudgy Penguinsチームであることにも説得力がでます。
リリースがとても楽しみです!
以上、「Abstract」のリサーチでした。
🔗参考/画像引用先:HP / X / DOC
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Author:mitsui @web3リサーチャー
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