おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は「ファットプロトコル」について思うことを書いてみます。
ファットプロトコル とは?
「ファットプロトコル(Fat Protocol)」は、直訳すると富むプロトコルという意味で、今までのインターネットと異なり、ブロックチェーンが中心の世界ではプロトコルレイヤーが強くなるという話です。
Web2.0(The Web)では、「winner take all」という言葉もあるように、GAFAMを筆頭としたプラットフォーマーが強力な力を持ちました。それが現代では当たり前のあり方でした。これが上の図の左側が示す「Application Layer」が強かった時代です。
しかし、ブロックチェーンの時代はイーサリアムやSolanaなど、特定のプロトコルの上にアプリケーションが乗っかる形になるので、論理上、どれだけアプリケーションレイヤーが大きくなってもプロトコルを超えることがないということです。
例えば、YouTuberがどれだけ稼いで有名になっても、それを生み出す土壌であるYouTubeを超えることはないみたいな。むしろ有名なYouTuberが何人も出てきた方がYouTubeがどんどん成長していくみたいな。
同様に、OpenSea(Dapps)が盛り上がり、CryptoPunks(NFT)が盛り上がり、Uniswap(DeFi)が盛り上がっても、基盤のチェーンであるETHが成長するみたいな感じです。
これには一定の納得感はあるのですが、実態は果たしてそうだろうか?とも思うようになりました。
→「Fat Protocols」を提唱した元ブログはこちら
アプリケーションの誘致合戦
実際のプロトコル(ブロックチェーン)のほとんどは、助成金を出してアプリケーションの誘致に積極的です。お金出すので自社のチェーンでアプリケーション作ってくださいねという動きを活発に行っています。
結局、どんなプロトコルもその上にアプリケーションがないとユーザーとの接地面がなく、エコシステムが拡大していきません。そうなると、集客力のあるアプリケーションを作れるチームやブランドは各プロトコルから引っ張りだこになります。
NetflixやAmazonPrime等のプラットフォームは確かに強いですが、プラットフォームだけでは価値提供できないので、そこにあるコンテンツが非常に重要になります。なので、集客力のあるコンテンツは高値で購入することになります。これと同じ現象がアプリケーションとプロトコルの間では起こっています。
また、最近のDappsはマルチチェーン対応やオムニチェーン対応が主流になってきたこともあり、1プロトコルだけにアプリケーションが乗っているのではなく、複数のプロトコルにアプリケーションが乗っている状態も増えてきました。
そう考えると、プロトコルとアプリケーションのパワーバランスや価値の生まれ方は少し変わってきた感じがあります。
「Fat Protocols」が提唱されたのは2016年です。その時はブロックチェーンで何か作るならETHくらいしかなかったので、ETHのエコシステムがどんどん拡大していきましたが、その後にブロックチェーンが大量に出てきたことによって、力関係が変化しました。
もちろん、ロジック上、プロトコル上に構築し、そのトークンを活用しているので、アプリケーションがプロトコルを超えることはありませんが、なんだかんだ言ってアプリケーションレイヤーは重要だよなと思います。
集客力を持つアプリケーションは普通に強いです。
まあただ”強い”と書きましたが、アプリケーション vs プロトコルみたいな表現も少し違う気もしていて、結局プロトコルは基盤になるので、純粋な戦争ではありません。なのでどちらが強いかとか、パワーバランスがどうなのか、という世界線ではそもそもないようにも感じます。
あまりまとまっていませんが何が書きたかったのかというと、
2016年時点よりもマルチチェーン対応の簡易化やパブリックチェーンの乱立で、プトロコル側も選ばれるために必死になってきた
が、そもそも今までのインターネットと同じような概念でプロトコルとアプリケーションを捉えて力関係を比べるのは違うのかも?と思い始めた
という話です。
まあ元々の「Fat Protocols」の理論も別に力関係を比べているというよりも、価値の生まれ方や構造の比較みたいな感じだったと思いますが。
アプリケーションやグロースや収益化が目的であり、プロトコルは公共財・インフラとなることがゴールなので、起点が違いますよね。なので一概に比較はできませんし、価値判断も難しいです。
ふと思い出して気になったので、Fat Protocolsについて書いてみました。正直、今日のブログはあまりまとまっていない気もしますが、改めてプロトコルやアプリケーションについて考えるきっかけになれば幸いです。
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いつもおもしろい記事をありがとうございます!
今回の文章において「プロトコル」は「チェーン」「ネットワーク」のレイヤーを指す語彙として使われているようにお見受けしました。
しかし、Fat Protocolsのネタ元である https://www.usv.com/writing/2016/08/fat-protocols/ や、その後のフォローアップ記事である https://www.placeholder.vc/blog/2020/1/30/thin-applications においては、必ずしもそうではないかと思います。少なくとも私は、下記のようなレイヤー構造があると認識しています。
ユーザ・インターフェイス
アプリケーション
プロトコル
ブロックチェーン
たとえばSubstackやTwitterを例として考えてみると、それぞれのアプリケーションで「ID管理」の処理を実装しているわけですが、Ethereumエコシステムにおいては「ENS」をプロトコルとしてアプリケーションをまたいで共通の「ID(名前)」を活用する流れがあります。これまでアプリケーションの一部として実装していたものをプロトコルとして実装することで、相対的にプロトコル層を厚く、アプリケーション層を薄くつくっていくアーキテクチャになるぞ、というのがJoel Monegroさんが示してきたことかと思います。
Web3では、ファットプロトコールが当然視され(そしてそこが収益源となるという暗黙の前提がありました)ていましたが、それを疑う視点というのは重要だと思いました。参考になりました。